当館の調査・研究活動

小笠原諸島から新種のカタビロアメンボを発見

写真.新種 イルカケシカタビロアメンボ Microvelia (Pacificovelia) amphitrite Matsushima & Watanabe, 2026(左,雄;右,雌).写真は久末遊博士撮影.

 

石川県ふれあい昆虫館の渡部晃平学芸員、愛知県の会社員の松島良介氏、一般財団法人自然環境研究センターの久末遊研究員の研究チームが、小笠原諸島において長年「不明種」とされてきたカタビロアメンボを詳細に検討した結果、未記載種であることが判明し、新種「イルカケシカタビロアメンボ Microvelia (Pacificovelia) amphitrite Matsushima & Watanabe, 2026」として記載・命名しました。

本研究成果は、カメムシ類の生物学を専門とする国際学術誌Journal of the International Heteropterists’ Societyに掲載されました。

   

カタビロアメンボ科は、水面に生息する微小な水生カメムシで、小笠原諸島からはこれまでに4種が記録されていました。しかし、そのうち1種は1978年の発見以来、約半世紀にわたって不明種として扱われてきました。今回、研究チームによる野外調査や父島での観察会で得られた標本、および過去の報告に用いられた証拠標本等を精査した結果、雄の前・中脚および交尾器の形態的特徴から、本種がケシカタビロアメンボ属のPacificovelia亜属に属することが判明しました。さらに、大型な体を覆う長く直立した剛毛などの特徴的な形態に基づき、既知種とは区別される未記載種であると結論付けました。

 

学名は、本新種が一度も陸続きになったことのない海洋島に分布することや、雄の交尾器側片がイルカを彷彿とさせる形状であることから、ギリシャ神話でイルカに乗って海を渡った女神に因んで「アムピトリーテー(amphitrite)」と名付けました。和名の「イルカ」もこれに由来します。

 

あわせて本研究では、小笠原諸島のケシカタビロアメンボ相の再検討を行いました。その結果、過去にケシカタビロアメンボMicrovelia douglasiとして記録された標本は、新種イルカケシカタビロアメンボ、または2023年に新種記載されたオガサワラケシカタビロアメンボの2種であることを示しました。これにより、ケシカタビロアメンボが小笠原諸島に分布しない可能性が示されました。オガサワラケシカタビロアメンボについては新たに9つの島から記録され、本種が小笠原諸島に広く分布していることを明らかにしました。

 

さらに、これら2種の食性を野外調査した結果、アリやトビムシ、キジラミ、ハチ類等、様々な節足動物を捕食していることが確認されました。注目すべきは、餌の半数以上が小笠原諸島に侵入した外来種であったことで、両種が外来種も餌資源として利用していることが分かりました。

 

本研究の一部は環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20244RB3)の助成を受けました。 

 

論文情報

論文タイトル:New species and new distributional records of the genus Microvelia Westwood (Hemiptera: Heteroptera: Veliidae) from the Japanese Ogasawara Islands, with an illustrated key to Ogasawaran species

掲載誌:Journal of the International Heteropterists’ Society

著者:Ryosuke Matsushima (松島良介), Yu Hisasue (久末 遊),Kohei Watanabe (渡部晃平)

論文掲載サイト:https://doi.org/10.11646/jihs.3.1.2