当館の調査・研究活動

国内94年ぶり!日本から新属新種のミズカメムシを発見

ナギサミズカメムシのオス成虫

 

石川県ふれあい昆虫館の渡部晃平学芸員、福岡県保健環境研究所の中島 淳専門研究員、ホシザキ野生生物研究所の林 成多研究員の研究チームが、日本から新属新種のミズカメムシを発見し、記載・命名しました。ミズカメムシ科の新属が日本から発見されるのは94年ぶり、ミズカメムシ科の属が日本人によって記載されるのは2例目になります。

本研究成果は動物分類学の国際誌Zootaxaに掲載されました。

 

ミズカメムシ科は、ため池や水田、海岸などの水面上や水際に生息する半水生のカメムシです。日本からはこれまでに6種が知られていました。この度、福岡県と島根県の海岸から発見された不明種の形態を詳しく検討した結果、これまで世界で知られていたどの属にも該当しない顕著な未知の種であることが判明しました。論文では新属ナギサミズカメムシ属 Nagisavelia Watanabe, Nakajima et Hayashi, 2023を創設し、新種ナギサミズカメムシ Nagisavelia hikarui Watanabe, Nakajima et Hayashi, 2023として記載しました。日本からミズカメムシ科の新属が発見されるのは94年ぶり、新種が発見されるのは59年ぶりです。

 

 本新属新種は海岸の波打ち際である「渚」に生息することから、和名を「ナギサミズカメムシ属」および「ナギサミズカメムシ」、種小名は発見者の長野 光氏に献名し「hikarui」と名付けました。頭部および口吻が非常に長いこと、複眼が退化していること、触角が短く棘を欠くことなどにより他の属と容易に区別することができます。

 

 ナギサミズカメムシは複眼が退化し、海岸の波打ち際に生息するという点で、ミズカメムシ科の中でも特異な存在です。現時点では本州(島根県)、四国(香川県)、九州(福岡県)から発見されており、日本固有種の可能性があります。今後、全国各地で調査が進むことにより、詳細な分布域の解明が期待されます。

  

論文情報

論文タイトル:Nagisavelia hikarui, a new genus and species of Mesoveliinae (Hemiptera: Heteroptera: Mesoveliidae) inhabiting shingle beaches in Japan

掲載誌:Zootaxa

著者:Kohei Watanabe (渡部晃平),Jun Nakajima(中島 淳),Masakazu Hayashi(林 成多)

論文掲載サイト:https://doi.org/10.11646/zootaxa.5353.5.5