当館の調査・研究活動

琵琶湖から新種のカタビロアメンボを発見

ビワコナガレカタビロアメンボのオス成虫

 

石川県ふれあい昆虫館の渡部晃平学芸員、ホシザキ野生生物研究所の林 成多研究員の研究チームが、日本から新種のカタビロアメンボを発見し、記載・命名しました。ナガレカタビロアメンボ属の新種が国内から発見されたのは、1964年以降59年ぶりになります。

本研究成果は動物分類学の国際誌Zootaxaに掲載されました。

 

カタビロアメンボ科は、水面上を走り回る小さな水生カメムシで、ため池、水田、河川などに生息しています。日本からはこれまでに21種が知られていました。このうち、河川や湖に生息するナガレカタビロアメンボ属には不明種が知られており、見た目が良く似ていることから、長らくその正体は不明のままでした。今回、DNA分析を用いて日本各地のサンプルを比較した結果、琵琶湖の個体群は明らかに既知種と異なっていることがわかり、形態を詳しく検討した上で林研究員と共同で新種として発表しました。

 

 本新種は、琵琶湖で発見されたことから、和名を「ビワコナガレカタビロアメンボ」、眼に多くの毛が生えるという形態的な特徴から学名を「Pseudovelia lasiomma」と名付けました。種小名は「毛の生えた眼」を意味しています。国内に生息するナガレカタビロアメンボ属5種とは眼に多くの毛を有することで容易に区別可能です。本研究では、日本に分布する種との識別の手引きを付記しました。今後の野外調査において、正確な種同定に繋がることが期待されます。

 

 琵琶湖は世界的な古代湖の一つとして知られ、周辺の水系を含めると魚類や淡水貝類に多くの固有種がいます。しかしながら、昆虫の固有種についてはほとんど例がなく、この新種が琵琶湖の固有種であるかどうかは、他地域でのより詳しい調査が必要になります。

  

論文情報

論文タイトル:A new species of Pseudovelia Hoberlandt, 1950 (Hemiptera: Heteroptera: Veliidae) from Honshu, Japan

掲載誌:Zootaxa

著者:Kohei Watanabe (渡部晃平),Masakazu Hayashi (林 成多)

論文のWEBページへのリンク:https://doi.org/10.11646/zootaxa.5239.4.6